「Alone together」

 本多さんは「MISSING」に続いて2作目でした。前作が短編集だったのに対して、こちらは長編。カバー裏にあるあらすじなかを見るとそれほどでもないんですが、最初の2・3ページを読んだだけで、ぐぐっと物語に引き込まれます。

 かなりの努力とお金をかけて入学した名門医大を、いとも簡単に辞めてしまった「僕」。3年後、脳神経学の教授に突然呼びだされ、「ある女性を守ってほしい」と頼まれます。

 「僕」と教授との接点は学生時代、数回授業を受けただけ。当時「僕」は教授に質問をしたのです、「脳に呪いの入る隙はあるのか」と。権威といわれた教授の答えは「その可能性を否定することはできない」。

 こんな意味深な“前フリ”を喰らって、どうせいっちゅうねん(笑)。いや、読むしかないんですけど。ええ。一気に読みましたわよ。この物語は、感想を書くのがちょっと難しいですね。どこに触れてもネタバレになりそうな気がします。

 物語の主人公「僕」とこ柳瀬。語り口が淡々としているのと、狙っているのではないにしても、天然ともいいがたいユニークな“発想”の数々がとても魅力的ですね。なぜか、私は森博嗣をイメージしてしまいましたが。いや、水柿くんか(笑)。

 「僕」は、依頼されたことを成し遂げることで、自分の存在*1を認めるようになるんじゃないかと思ったりもしたのですが、そんなに簡単なもんじゃないよねえ。すごく哲学ちっくで、その辺りを考え始めると、どつぼにはまります(笑)。なんとも、私の思考の浅いことよ(^^;)。

 たぶん、この作品は、物語をあるがまま、そのまま受け入れればいいんじゃないかと思います。あまり深く考えず、感動の余韻を噛みしめていればいいんじゃないかと。深く考えれば考えるほど、それこそ私には「僕」が天使にも悪魔にも見えてしまうのですよ。とてもマニアックな言い方をすれば、「弥勒の譲」*2(爆)。いやいや。表情の端々に天使と悪魔が同時に存在してる気がする。でも、「僕」はそれなりにまっすぐ生きていこうとしている。救いというか、最後に“希望”を残してくれてあることに、感謝なのです。

*1:存在価値、ではなく、存在そのもの、なのですよね、「僕」の場合。

*2:炎の蜃気楼シリーズ参照のこと(^-^)。