「悪魔と詐欺師 薬屋探偵妖綺談 (講談社ノベルス)」

 薬屋探偵妖綺談シリーズその3。前作、前々作に比べてタイトルがストレートなところがよい(笑)。

 今回は、連作短編+最後に中編、といういつもとはちょっと違ったカタチでございました。規模は違えど、「どぶどろ (扶桑社文庫―昭和ミステリ秘宝)」やら「ぼんくら」やら「妖異金瓶梅 (角川文庫 緑 356-28)」やらを思い起こさせますね。あとがきには、「今までとは違った薬屋探偵」だったとありますが、そうか? そうなのか? そうは思えない私は、まだまだ未熟者なのでしょうね(^^;)。

 西尾維新は“日本語遣い”だと先に書きましたが、これまた違った意味で高里椎奈も“日本語遣い”なのですねえ。こちらはとても女性らしさが強調されていると思いますが(笑)。思わせぶり、意味深、な日本語。よくあれだけ器用に遣えるなあ、と感心するほどです。

 そっちにばかり意識がいくから、あまり目立たないけれども、でも、文章はとても優しいのです。事件は凄惨だったりするんですけど、人間全部を包み込んでしまう“妖怪”の優しさ、ですかね(笑)。妖怪はエライよ(^-^)。

 日本の妖怪とは見た目まったく違う感じを受けますが、でも、やっぱり根底は同じだなあ、と思うのですね。「豆腐小僧双六道中ふりだし」を、というか京極夏彦の偉大さを知ります(何)。