「遠い約束 (創元推理文庫)」

 光原百合はミステリー作家ではないのではないか。あの人はミステリーを通して、純文学を書こうとしているのではないか。そんな風に思います。それにしては、謎の使い方が上手いんだよなあ(笑)。

 こちらも連作短編で、吉野桜子という女の子が、大学に入学して自分の目標を見つけるまでの物語です。創元推理文庫なのに、野間美由紀のイラストがついててなんか変(笑)。ま、桜子の成長物語である、と考えるとそれはそれで問題はないんですけど。でも、創元なのに。でも、野間美由紀を選んだってところがやっぱミステリーだからなんだろうなあ。ぶつぶつ。

 光原百合は「十八の夏 (双葉文庫)」を読んで、えらく感動したものです。今回は、違う意味でよりいっそう感動させていただきました。しっかり本格しているんだけれども、どうしても“少女小説”というイロをぬぐえないんだよね。でも、私はもしかしたらそっちの方が好きなのかもしれない。…いい年をして(^^;)。

 「十八の夏 (双葉文庫)」はとても純文学寄りなのですよ。それに比べると、やっぱり「遠い約束 (創元推理文庫)」は少女小説寄りに違いない。いや、でも、これは書き方の問題だけで、純文学に寄せようと思えば寄せられるだけの力はあるはずなのですけどね。でも敢えて、きっと敢えて少女小説寄りにしてあるんだと思う。だって、そっちの方が似合うもんね*1

 だから敬遠する人もいるだろうけれども、でも、光原百合だもん、読まなきゃ損だよねえ(笑)。

*1:ま、何をもってして“少女小説”とするのか、というところで見解の違いは出てくるんでしょうが。私の場合、それは…勘です(笑)。いや、フィーリング、そうフィーリング。ま、いいや、その辺は。