3月26日〜28日分

 なんだかどれも切ない話ばかりでした。そんな中でも「器量のぞみ」「首吊り御本尊」はちょっと心が温かくなりました。どれも、取るに足らない町人の話ですが、でもそこにこそ、大切なモノがある。そういうことがとてもよく分かります。

 もっとスプラッタな感じをイメージしてたんですが、思った以上に普通でした。「眼球綺譚 (集英社文庫)」の方がエグイと思う。そもそも、そういう話ではないらしく、どちらかというと折原一の倒錯の世界に近い。正気と狂気の境目はどこにあるのか。そのメビウスの環の中に落ち込んでしまえば、自分だってどうなるか分からない。そんな身近な恐怖を感じます。

 適度のスパイスの利いた短編集。天藤真の短編といえば、「遠きに目ありて (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)」しか読んだことがなく、しかもあれは連作短編だったので、また趣の違った、ほのぼのとしたものばかりではなく、キリリと引き締まった作品が多かったように思います。でも「父子像」「死神はコーナーに待つ」はちょっと心が温かくなる感じ。逆に、短い中で2時間サスペンスのようなハラハラどきどきを詰め込んだ「日曜日は殺しの日」も面白かったです。

 せっかくのVシリーズなのに、れんちゃん出ず。保呂草潤平とかろうじて紅子さんが出てくるだけ。あとは、西之園萌絵と国枝先生が出てきて、S&MシリーズとリンクしたVシリーズ、というよりは、やっぱりS&Mシリーズの番外編、といった感じ。そう。はっきり言って、物足りないのです(笑)。まあ、本来なら、ここで触れられる“秘密”がある意味重要なのですが、先に四季シリーズを読んでしまったので、この辺は逆ににやりと笑ってしまいました。こういうややこしい書き方をするから(笑)、読者が混乱するんですよ。まあ、それもお楽しみの一つですが。

 フランスで映画化されるそうですが、そっちの方がなんだかよく似合いそう。標本室って、イメージしにくいけど、舞台がフランスならとてもイメージしやすい(気分の問題か?(笑))。個人的には、同時収録の「六角形の小部屋」の方が印象に残りましたが。どちらかというと、こっちの方がリアリティがある。主人公の気持ちにリンクしやすい感じ。表題作の方は、絵画を眺めている感じで、なかなか実感できない。だからよけいに、フランスが似合うんだと思う。

 読んでます。「邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)」の姉妹編だそうです。舞台は「スリーバレー」といううらぶれたバー。バーテンの松永、雑誌ライターの宮田、歴史学者の静香は前作と同じ。そこに新たに、来日中のペンシルバニア大学教授・ジョゼフが加わって、世界の七不思議に“新説”で切り込みます。とはいっても、前作ほどインパクトもなく(笑)。なんというか、さらっと流せてしまうのは、やっぱり文章が上手くないから?(笑)。