「アリア系銀河鉄道」ISBN:4334736610

 最近、柄刀さんづいてます。というか、今月購入した22冊の本のうち、4冊が柄刀さん。そのうちの1冊がこれです。

 以前、何かのアンソロジーでこのシリーズの中の1話を読んだような気がします。主人公は紅茶好きの博士。そのときは、その博士がちょっとした“謎”を解く、というような内容だったと思います。まさか、こんなシリーズだったとは思いませんでした。

 ひと言でいうなら、SFとミステリーの融合。設定としては、西澤保彦と似てますね。環境というか設定は、通常考えられない“異世界”。しかし、その世界にはその世界なりのちゃんとした秩序があり、そこで起こった謎はその秩序の上にキレイに解決できる、という。こういう風に書いてしまうと、2人とも同じような作品を描いているように思えますが、それがまた全く違う(当たり前だけど)。

 西澤さんの作品は私、間違いなく好きです。最初に読んだのが「七回死んだ男」ですが、こんな世界もあるのね、ととても楽しみましたもの。でも、どっちかというと、柄刀さんの方が好き。シリーズものということもあるでしょうし、連作短編ということもあるかもしれません。でも、なんというか、ものすごく心に温かいモノが残ります。それは偏に、宇佐見博士の人柄だと思うのです。

 探偵役ですから、頭脳は明晰で推理力もありますが、それだけではないのですね。たぶん、これがシリーズの1冊目だと思うのですが、私はこの宇佐見博士が一体何の研究をしているのか、分かりません(笑)。でも、紅茶が好きなこと、そして人間を好きなことはよく分かります。

 宇佐見博士は、どういうわけかよく“異世界”に行ってしまいます。でも、研究者からなのかもしれませんが、その状態をすぐ理解し、とても理性的に行動します。そして、その世界で起こっている謎を解き明かすのですが、その後の話がまた感動的なんですねえ。ロマンを感じるし、愛を感じる。これまで、柄刀さんの作品を読んできて感じてきたその“優しさ”が溢れてます。

 この人を選んで間違いではなかった。

 読書の感想としてはあまり適切ではないかもしれませんが(笑)、そんなことを思いました。また、未読の作品がある、ということを幸せに感じます。いや、ホントいい作品でした(^-^)。