「顔のない男 (文春文庫)」

 出てきましたよ、工藤さん(にっこり)。や、名前はまったく出てこないんですけどね。“三軒茶屋のビアバー”ってだけなんですけど、これは「香菜里屋」に間違いない*1。もう、それが分かっただけで幸せ〜。

 形式としては、連作短編の形をとっていたようですが、1冊の本になっちゃえば、もう間違いなく長編です。根底に流れるのは「顔のない男=空木」。少しでも彼に近づいたと思ったとたん、関係者と違う事件に巻き込まれ、気付くと前より遠くに突き放されている…。そんなじれったさをずーっと味わわされていくのです。おかげで、最後まで止まりませんでしたよ(^^;)。分量的にはそんなに厚くないので大丈夫なんですけどね。

 主人公同様、読んでるこっちまで見事に翻弄されてしまう。構成がうまいだけでなく、物語に引き込む力もすごいんですよね。その上で、ミスリードとまではいわないけれども、作者の思惑通りに読者を誘導するのは、やっぱり文章の上手さが成せる技でしょう。

 同じ日本語なのに、使う人によって全然違う。面白いなあ(^-^)。

*1:解説で二階堂さんがちゃんと認めてます。