「クリスマス12のミステリー」

 洋モノのアンソロジー、堪能しました。

 ミステリーと見た場合、面白かったのは「真珠の首飾り」ドロシー・L・セイヤーズと、「フランス皇太子の人形」エラリー・クイーン。クイーンのエラリーもの(といっていいの?)は初めて*1でしたが、思ったより軽くて楽しめました。それは全体的に言えるかもしれませんね。ちょっと古めの作品だし、洋モノだし、いかめしかったり硬かったり、そんなイメージを持ってたんですが、全然。

 キャラクターが魅力的で、わくわくしたのは「クリスマスの万引はお早目に」ロバート・サマロット。やんちゃな“おばさま”が正義の味方ってのがかわいらしくていい感じ。「煙突からお静かに」ニック・オドノホウでは、2人の若くてカッコいい(と思われる。“マッチョ”とか言うんでしょうか(げ))探偵のコンビがステキ。子供がまたいい味を出してます。「尖塔の怪」エドワード・D・ホックは既読のサム・ホーソーンでしたが、訳者が違うと雰囲気も変わるんですね。サム先生と保安官の仲がなんかちょっと違う感じがしました。

 キャラクターが、というよりは、すべてがホームズっぽくて、そういう意味で面白かったのが「ディケンズ愛好家」オーガスト・ダーレス。短編というよりは、ショートショートでしたが、「クリスマス・イヴの惨劇」スタンリー・エリンはものすごく切れ味が鋭く印象的でした。

 でも、いちばん面白かったのは、「目隠し鬼」ジョン・ディクスン・カー。ミステリーというよりは、ホラー色の方が濃いのですが、そんなことはどうだっていい(笑)。短編なのに、カーの魅力満載ですねえ。私、こういうのが好きなんですよね。淡々としたホラー。

 それからもうひとつ。「クリスマスの十三日」アイザック・アシモフは、語り口から登場人物、落としどころまで、どれをとってもいい感じ。「黒後家蜘蛛の会」を1冊しか読んでないんですけど、こういうストーリーを書く人だということが分かると、なんだかSFにまで手を出してもいいかも、と思ってしまいます(でも、きっとSFにまでは手が出ません(笑))。

 噂によると「クリスマス13の戦慄」というのが対であるらしいのです。並んだ作家さんに見覚えはまったくないのですが(笑)、見つけたら読んでみよう。

*1:というか、クイーンは「Xの悲劇」しか読んでないのですが。