「ジャカルタ炎上」

 思ったよりも楽しめました。それはきっと、恋愛だけのお話ではなかったから、でしょうかね。

 物語の舞台となったのは、1998年のジャカルタ。クーデターが起きたかの地に、少なからず懐かしさを憶えているのは、きっと錯覚でしょう(笑)。いや、当時、父親がいたのですよ、インドネシアに。ジャカルタではなく、昔ボルネオといっていた島です。今ではカリマンタン島というのでしたっけ*1。ジャングルが残る(というか、それしかない)未開の地のイメージですね。実際、交通の便が悪いので、まだ行ったことがありません。

 当時、政府から避難勧告が出ていて、危険レベルは4。ほとんどの邦人が帰国したと聞きます。危険なのは、ジャカルタです。父は、ジャカルタから離れた、いたって平和な島にいました。帰国のためには一度、ジャカルタへ飛ばなければなりませんでした。そっちの方が危険やっちゅーねん(笑)。事実、あり金(現金)を抱えてジャカルタへ行ったものの、実際に日本への飛行機は足りていないし、いつ飛ぶかも、しかも日本のどこへ着陸するかも分からないという状況。航空運賃だって、臨時便とはいえ日本の航空会社です。いつもの格安の価格で帰れるはずもない。いつ飛行機に乗れるかも分からないから、ホテルに泊まるわけにもいかず、空港から一歩も出られない状況だったそうです。しかも、取るものも取りあえずジャカルタへ出てきたわけですから、食事なんて用意しているはずもなく、ロビーで同席した邦人の母娘からおむすびをもらって感激したという話を覚えています。とにかく、ジャカルタでの足止めは1日で済み、飛行機もちゃんと大阪に着陸する便を確保できたのですが、今でも言いますよ、残っていた方がよっぽど安全だった、と(笑)。

 なかなか帰国できませんが、父と会うと決まってインドネシアの話をしてくれます。当然というか、それしか話のネタがないのでしょうが(笑)。以前はマレーシアに赴任していて、そこへは2度ほど遊びに行ったことがあるのですが、まだ行ってないからでしょうか*2インドネシアの方が身近に感じます。…ジャカルタのことは全く分からないんですけどね(笑)。

 といった私の背景というものがあり、その上で読んだ今回の小説。主人公である女性の仕事や環境、生き方は別にどうとこうことはないのですが(こらこら^^;)、現地の人たちにとても感情が動かされました。ホテルの支配人(ジャワ人)、そのホテルで働く日本人営業マン、ホテルの要職に就く華人(華僑の人)、日本に留学していた主人公の友人(♂、華僑)、日本料理店の女将とその娘(日本人)など、あの“クーデター”でそれぞれが何を考え、どう行動したか、といったところがとても興味深かった。日本人には決して知ることのできない、他民族国家内の確執、とでもいうんでしょうか。そこがいちばん面白かったですね。

*1:ジャカルタがあるのはジャワ島。メダンがあるのはスマトラ島カリマンタン島は北半分がマレーシア領イリアン・ジャヤ島の東半分はパブアニューギニア領。あと、スラウェシ島とかなんせ島がいっぱい。確か半分東ティモール領の島もあったはず。

*2:…マレーシアにはあまりいい思い出がないから、なのかもしれません(笑)。