「半島を出よ」

 やっとのことで読み終わりました。この作品は勢いで読まなきゃいけなかったんですね(笑)。上巻には思った以上に時間がかかってしまいましたが、下巻は一気に読み終わりました。

 すごかったです。

 何がすごいって、やっぱりあの量でしょう。まず、ずっしりとくる質量でびびります(笑)。そして、巻頭の登場人物一覧に驚かされます(というか、ある意味引きまっせ)。次に、文字の密度にくらくらします。村上龍といえば「トパーズ」くらいしか読んだことがなかったりしますが(笑)、あの短編集ですら、改行が少なく、どこからどこまでが会話なのか分かりにくく、でもそれが不思議と混乱を呼ぶわけではないのですね。なぜかすっと頭に入ってくる。本作も、見開き2ページで改行があるかないか、というような版面*1(笑)。それをなんとか読み終えるとですね、巻末には参考資料一覧がまたずらずらっと並ぶわけですよ。

 最初はねえ、「こんなの、最後まで読めるのかよ」と、思いつつ(でも読むことは分かってるんだけど(笑)、「ちゃんと理解できるだろうか」「楽しめるだろうか」という不安がいっぱいだったんですけどね。基本的に軍事モノって得意じゃないし。福井晴敏くらい分かりやすく、読みやすく書いてくれてあれば別だけどさ。これって、もう、日本政府の人たちの肩書きを並べるだけで、数行、ヘタすると10行以上がほぼ漢字で埋まったりするし、北朝鮮の人たちだと、どこ出身でどういう出自で、ってのが漢字とカタカナで表記されるんだけれども、どっちも馴染みがなさすぎてちっとも頭に入ってこない(笑)。

 でもそれは、序章の辺りまで。本編に入ると、断然面白くなりました。

 書き方としては、それこそ改行なし、「 」なし、で一見読みにくそうなんだけど、物語の筋は案外ストレートに伝わります。しかも、全く押しつけがましさがないので、逆に共感できちゃいます。さじ加減がちょうどいい、って感じでしょうか。

 ここで引き合いに出していいかどうか分かりませんが、私がとても苦手とする村上春樹の場合、押しつけがましさがないところまでは同じですが、共感できるまでの“何か”がありません。足りないんじゃなくて、全くないの。だから理解に苦しむ(^^;)。

 「トパーズ」なんかもそうですが、あることを、そのまま淡々と語っているだけなんだけれども、何が言いたいのかはちゃんと伝わる(そんな気がしているだけかもしれませんが(笑))。

 基本的に、事実と欲望が描かれていたような気がします。事実というのは、実際にあったこと。その場その場で、それぞれそこに関わる人たちが、どういう行動を取ったか。どういう目的あるいは意図、もしくは欲望によって動いたか。そういうことが描かれているのですね。その結果、どうなったか…。

 最後のエピローグ。とても印象的でした。どのくらい印象的だったかというと、その続きを夢で見るくらい(笑)。●●したはずの●●が●●●●●んだよね(うふふ)。でも、何も変わらない(^-^)。そういうところが、とても気に入ってます。うん。

 でもねえ。なんとなく、タイトルが気に入らない(笑)。ある意味“必然”だったのかもしれないなあ、とは思うのですけどね。きっと村上龍はあっち側の人たちのことを描きたかったと思うから。でも、それもなんとなく違う気がするなあ。

 このタイトル、どういう風に解釈したらよいでしょうね(^^;)。

*1:今は版面とか言わないのかな(^^;)。