線引きはどこだ。

 基本的に、純文学が苦手です。恋愛小説が苦手です。かといって、全く受け付けないかといえば、そうでもなくて。最近では小川洋子などもよく読みますし、古いところではO・ヘンリー、「車輪の下ヘルマン・ヘッセ、「老人と海ヘミングウェイは好きなのです。

 何が違うんだろう。

 読める作家と読めない作家、同じ作家でも、大丈夫なものとダメなもの。私はどこで線引きをしてるんだろう。

 私が今まで読んだ中で最も苦手な作家は、村上春樹。これまで2作読みましたが、どっちも結局最後には「だから何? なんなの? いったい何が言いたいの!」とキレました(笑)。

 ダメだったのが大丈夫になったのは、恩田陸。彼女はちょっと難しくて、ミステリーっぽいのもあるし、純文学っぽいのもあるし、青春小説なんかは得意だし。私的には“ミステリー作家”という先入観で読んでしまったところがあり、「六番目の小夜子」で大失敗をしました。ミステリーだと思っていたから、謎はあってもそれが論理的に解決されないどころか、放置(笑)。違った目で見るとそれも全然OKなんだけど、読み終わった直後は「はあ?」と気が抜けましたね。恩田さん、今ではだいぶ読み方を分かってきたので(笑)、楽しく読んでます。

 逆に、最初っからOKだったのは、小川洋子。「博士の愛した数式」から入ったのが良かったのかも。今は、あの作品は彼女独特の“痛さ”が足りない、とも思うようになりましたし。

 最初は良かったのに、最近物足りなさを感じてきたのは、舞城王太郎メフィスト賞でデビューして、とても勢いのある独自の世界を築いた中で展開されるミステリーがとても面白かったのですが、「みんな元気。」「好き好き大好き超愛してる。」辺りから、ちょっと違うなあ、と。「煙か土か食い物」のときの衝撃が忘れられない、というのもあるかもしれませんけどね。直木賞ではなく、芥川賞候補になった、というのもなんとなく皮肉な感じ。うーん、そっち側へ行くのか、っていう勝手な思い込みですが(笑)。

 結果的に言えるのは、“読んでみないと分からない”ということなのかもしれません(笑)。無責任というか、そもそも最初から結末は分かっていたのです。読んでみないと分からないんだけど、でも、純文学というと最初から敬遠するから、実際はよっぽどのことがない限りなかなか読む機会がない、というのが実状。逆に、私がミステリー作家だと思っている人の純文学作品というのは、間違って買う可能性が高く(笑)、しかもその人の作品が好きなら、読んでみるか、という気にもなりますしね。

 ということで、「スローグッドバイ石田衣良を読んでいるのです。文庫になったとたん、オンライン書店で購入したのですが、どんな内容か確かめなかったのですねえ。手にしてびっくり! 短編の恋愛小説が10編…。恋愛小説ですか。短編とはいえ10作もですか。恋愛小説ねえ、そういえば最近、女性誌で恋愛相談のコーナーとか持ってたっけ(見たことないけど)。ああ、そうなのか、ふーん。ってな感じで、何度か躊躇した結果、今読んでいるのですが(笑)。でもこれがね、なかなか良いのですよ。恋愛小説なのに。短編だからかもしれませんね。短編好きだし。それだけじゃないだろうけど、でも、だからどうなの。っていう具体的なことが分からない。恋愛小説でもどれなら良くて、何がダメなの。だから、線引きできないんだってば。

 先日、仕事の関係で読んだ「東京タワー江國香織江國香織自体初めてだったのですが、可もなく不可もなくという感じ。そういえば江國さん、京極夏彦と同時に第130回の直木賞を受賞してましたね。直木賞ってのは、エンタテインメント作品に贈られる賞なので、いいのかなとも思いますが、そうすると、舞城王太郎芥川賞なのがちょっと解せなくなるんだなあ(笑)。まあ、あの賞は作家に贈られるのではなく、作品に贈られるので、純粋に作品をジャンル分けすれば良いだけなのかもしれませんね。でもさあ、第130回芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」と「蛇にピアス」。綿矢りさは分かるよ、純粋に純文学だよね。でも、金原ひとみのアレはエンタテインメント作品ではないのか? いや、違うのか。

 まあいいや。なんせ、嫌がってたわりに「スローグッドバイ」、楽しく読んでます。というご報告でした。長いっちゅーねん。