松本清張傑作短篇コレクション

 現在、下巻を読んでます。これだけで松本清張について語るにはまったく知識が足りてないってことはよく分かってるんですが、でも、だからこそ分かることってのもあるわけで。うん。

 まだ残り2作ほどありますが、いちばん面白かったのは「空白の意匠」。これほど胃が痛くなる作品はない(笑)。同じような仕事をしてますからね。気持ちが分かりすぎるほど分かるんですよ。

 時代が時代だからだと思うのですが、だいたいどの作品も“男社会ありき”ですよね。女性の社会進出なんて考えられない時代なのでしょう。だからこその女の哀しさっていうのはとてもよく伝わりました。「支払い過ぎた縁談」なんてのはその象徴みたいなもんでしょう(笑)。そういう作品はそれなりに楽しめました。でも、所詮“男社会”のできごと。これがもっとハードボイルド寄りだとまた違うんでしょうが、そうじゃなく、ハードボイルドをお行儀良くして、しかも泥臭くすると“松本清張的社会派作品”になるんですね、きっと。それが悪いと言うわけでは決してないのですが。ただ、中に合わないモノがある。

 例えばね、「空白の意匠」にしても中田の性別を変えるとたぶん、違う作品になると思うんですよね。もしかしたら、松本清張らしい作品ではなくなるのかもしれないけれども。もうちょっと「式場の微笑」のような感じの作品をもっとたくさん読みたかった。「式場の微笑」の杉子は普通の女性(だと思う)。そういえばこれって、ミステリーでも何でもないかもしれない(笑)。それでいえば「空白の意匠」だって違うよねえ。むむ。3冊の中のミステリーって案外少ないかも。

 かといって、長編に手を出すのはまだためらいがあります。一概に古いから、という理由ではないんだよな、これが。古いのがダメだったら、横溝正史だって江戸川乱歩だってダメなはずだけど、でもこっちは全然平気。だからやっぱり相性なんだろうな。長編でも相性のいい作品に出会えるといいなあ。

 といったところで思い出した。「本陣殺人事件」と「獄門島」、積んであるんだった。近々読みたいと思います。